前回の記事で内部エネルギーの値(またはその変化量)を求めることができるようになりましたが,それだけでは不十分!
例題を通じて,内部エネルギーの使い方を学んでいきましょう。
例題
公式もだいぶ出揃ってきているので,何をどう使えば求められそうか考えてみましょう。
よくある間違い
解説を始める前に,よくある間違いを紹介。
これは本当によく見かける間違いです。
2種類の物体を混合させても,温度や圧力はその和(またはその平均)にはなりません!
たとえば,20℃の容器に80℃のお湯を注いで熱平衡状態にするときを考えてください。 熱平衡状態の温度は何℃でしょう?
2つ合わせたから,20℃ + 80℃=100℃?
それとも平均をとって,(20℃ + 80℃)÷ 2=50℃?
これは,そのどちらでもありませんよね!(何℃に落ち着くかは容器の熱容量次第)
この話がよくわからない人は ↓ の記事で復習してから出直してきてください。
圧力の場合も同様で,2つのものを合わせた圧力は,元の気体の圧力の合計や平均にはなりません。 うっかりまちがえないように気をつけましょう!
解答
では正答を見ていきましょう。 理想気体ならば,必ず状態方程式が成り立つので,まずはそれを頼ってみます。
このままでは2つの未知数PとTに対して,式がこの1本しかないので,まだ解くことができません。 もう1つ式が必要ですが,どこからもってくればよいでしょう?
ここで「ボイル・シャルルかな?」という人が多いですが,そもそもボイル・シャルルの法則は状態方程式を式変形したものなので,それだと同じ式を2回立てていることになってなって無意味です(さらに言うと,今回は気体の混合でモル数が変化しているのでボイル・シャルルは使えません)。
気体の簡単な問題は状態方程式やボイル・シャルルだけで解けてしまうので,式をもう1つ!と言われると,すぐに思いつかない人が多いですが,私としてはここで「熱力学第1法則」を思い出してもらいたいです!
熱力学第1法則をこの問題に適用してみると…
内部エネルギーの変化(⊿U)が0。つまり,内部エネルギーは変化しない。
これがズバリ,今回のタイトルにもなっている「内部エネルギーの保存」です!
内部エネルギーの正体は,気体分子のもつ力学的エネルギーだったので,外部と仕事のやりとりがなければ保存されるのは当たり前。
ということで,前回学習した内部エネルギーの公式を用いて,混合する前と後で内部エネルギー(の合計)が等しいことを式にしてあげましょう。
内部エネルギーと温度は密接に関連していますが,温度とちがって,内部エネルギーは足すことができます。
みんながいつもやってる「運動エネルギー+位置エネルギー」と同じノリです。 エネルギーは合計してOK!
気体が混ざるだけの単純な例題でしたが,これまで習った知識が総動員されているので,よい復習になったのではないでしょうか?
いまの例題のように,問題文で直接内部エネルギーに触れてなくても,「内部エネルギーが保存する!」という事実に自力で気付けるようになってほしいです。
力学で高いところから物体を落とす問題では,問題文に「エネルギー」という単語がなくても,自然に力学的エネルギー保存則を使って解くのに,熱だとそれができない人がとても多いです…。 演習問題を解いて,パターンに慣れておきましょう!
今回は新しいことを習ったわけではないので,まとめノートはありません。
次回予告
次回は熱の問題でよく見かける,P-Vグラフに焦点を当てていきます!