力学に運動の3法則という基本法則が存在するのと同様に,熱の分野にも熱力学の法則と呼ばれる基本法則が存在します。
運動の3法則は第1〜第3法則までの3種類ですが,熱力学の法則は第0〜第3法則までの4種類(!)あります。 このうち高校物理で扱うのは第1法則と第2法則の2つ。 まずは第1法則から紹介したいと思います。
熱力学第1法則に入る前に
…と言いたいところですが法則の前に,いくつか用語の説明をしないといけません。 熱力学第1法則は,公式の形だけ丸暗記しても使えない公式の筆頭です!
公式に使われている文字の意味をしっかりと理解していないと,いざ計算しようと思っても正しく代入できません。
熱力学第1法則に登場するのはQ,U,Wの3つ。 この3つの文字がそれぞれ何を表すのか,ひとつずつ見ていきましょう。
① Q
まずQですが,これは以前から登場していますね!
そう,熱量です。 より詳しく書くと,ここでは「物体に “与えた” 熱量」を表します。
熱量と聞いてピンとこない人は以前の記事を見返してください。
② U
Uは物体の内部エネルギーと呼ばれているものです。 内部エネルギーは初めて登場する用語ですが,詳しい話はまたの機会にします。
いまの段階で内部エネルギーについて知っておいてほしいことは,
・物体の内部エネルギー = その物体を構成する原子・分子がもつ力学的エネルギーの合計。
・内部エネルギーは物体の温度と密接に関係していて,物体の温度が高くなるほど,内部エネルギーも大きくなる。
の2点です。
③ W
最後にWです。 これは力学でも登場した「仕事」を表します。
熱力学第1法則では気体が主役なので,正確には「気体が “外部にした” 仕事」です。
言葉だけ聞いて分かった気になってはいけませんよ?
「気体が仕事をする」って具体的にどういうことでしょうか?
仕事をするとは,力学では「力を加えて物体を動かすこと」でしたが,熱の分野では「外部からの力に逆らって,気体が膨張する(=体積が増える)」ことを指します。
逆に,外部からの力によって気体の体積が減ることを「気体は外部から仕事を “される” 」と受け身形で表現します。
言葉の使い方と,それが何を表すのかに注意しましょう。
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
次回はいよいよ法則の中身について解説します!