物質の状態変化と潜熱

比熱や熱容量を学んで,物質に熱を加えたときの温度変化を計算できるようになりました。 しかし思い起こしてみてください。

「水は100℃で沸騰し,加熱し続けても温度は100℃のまま」

これは小学校の理科の時間に習う事実ですが,熱を加えているのに温度が変化しないってどういうこと? 今回は熱と温度上昇の関係について学習していきましょう!

【復習】物質の状態変化

まず物質は基本的に固体,液体,気体の3つの状態があり,圧力・温度でそのうちのどの状態になるかが決まります(今回は圧力は1気圧に固定して考えましょう)。

通常の物質は熱を加えると固体→液体→気体へと変化します。
分子どうしがガッチリ結びついているのが固体,結びつきがゆるんだものが液体,結びつきが切り離されたものが気体でした。

固体から液体への変化を融解,液体から気体への変化を蒸発,液体から固体への変化を凝固,気体から液体への変化を凝縮といいます。

また,一部の物質(ドライアイス,ヨウ素,ナフタレンなど)は液体を経ずに,固体と気体を直接行き来します。
固体から液体を経ずに気体になることを昇華
気体から液体を経ずに固体になることを凝華といいます。


温度変化のグラフ

いちばん身近な物質である水を例に,温度変化の様子を見てみましょう。

このグラフを見る上でのポイントは「加えた熱の使われ方」です。 実は熱には2通りの使われ方があります。

① 分子の熱運動を激しくするのに使われる熱と,② 分子間の結びつきを切り離すのに使われる熱です。

①の用途では温度が上昇し,②の用途では状態変化が起こります。

物質内での熱の使われ方

ここで先ほどのグラフをもう一度見てみましょう。

氷に熱を加えても,0℃になるまでは溶け出しません(固体だけの状態)。 しかし,0℃に達すると今度は一転し,全部溶けるまで温度は上がりません。

同様に,液体の水も100℃になるまでは沸騰しません(液体だけの状態)。 しかし,100℃に達すると,全部蒸発するまで温度は上がりません。

このことから,温度上昇と状態変化は同時に起こらない,ということがわかります。

これはつまり,加えた熱は①か②の用途で使われるが,熱の一部を①で,残りを②で〜といった使われ方はせず,どちらか一方に全振りされるということ!


潜熱

最後に用語を紹介します。 上記の②の用途(状態変化)に使われる熱は潜熱と呼ばれており,物質1gが完全に状態変化するのに必要な熱量として定義されています。

主な潜熱として融解熱蒸発熱があります。定義と照らし合わせると,融解熱は1gの固体が完全に液体になるのに必要な熱量,蒸発熱は1gの液体が完全に気体になるのに必要な熱量ということになります。

今回のまとめノート


時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

【演習】物質の状態変化と潜熱物質の状態変化と潜熱に関する演習問題にチャレンジ!...

次回予告

次回は熱の分野における重要な法則になります!

熱力学第1法則①熱力学第1法則は,公式を丸暗記しても使えない公式の筆頭です!公式に使われているQ,U,Wの3つが何を表すのかをしっかりと理解していないと,いざ計算しようと思っても正しく代入できません。...
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