比熱

早速ですがクイズ。 鉄のかたまりと水,温まりにくいのはどっちでしょうか。

「金属のほうが温まりやすいから,温まりにくいのは水に決まってるじゃん!」って?

本当にそうでしょうか。 実はこれ,問題文が不十分でこれだけではどっちが温まりやすいかわかりません。
何が不十分かというと,質量が書かれていないこと。
たとえばこのクイズ,鉄が1kgで,水が1gだとしたらどうでしょう?
お湯を沸かすとき,水の量が多いと沸騰しにくいことからも分かるとおり,同じ材質であっても,質量が大きい方がより温まりにくいです。 金属がいかに温まりやすいとしても,1kgの鉄と1gの水では,さすがに水のほうがすぐ温まります。

…でも,この比べ方はちょっとフェアじゃないですよね?
“材質として” どちらが温まりにくいかを比べるなら,質量を揃えてからじゃないと,ちゃんと比べたことになりません。 ここで登場するのが比熱の概念です。

材質の温まりにくさと比熱の関係

1gの物体の温度を1K上げるのに必要な熱量のことを比熱といいます(単位はJ/(g・K),「ジュール毎グラム毎ケルビン」と読む)

質量を1gに揃えているので,鉄と水の“材質としての温まりにくさ”を比べる場合は,比熱の大きさで比べればよい,ということになります。

ちなみに鉄の比熱はおよそ0.45J/(g・K),水の比熱はおよそ4.2J/(g・K) なので,同質量で比べればたしかに水のほうが温まりにくいです。


比熱と熱容量の関係

鉄の比熱は0.45J/(g・K)ですが,では,鉄1kgの熱容量は何J/Kでしょうか?

これは比熱と熱容量の意味を考えれば簡単に分かることです。
比熱 → 1gの物質の温度を1K上げるのに必要な熱量
熱容量 → 物質全体の温度を1K上げるのに必要な熱量
でした。これはいつでも言えるようにしておいてください!

鉄の比熱が0.45J/(g・K)ということは,鉄1gの温度を1K上げるのに0.45J必要ということ。
よって,1kg(=1000g)の鉄の温度を1K上げたかったら,その1000倍の熱が必要になります。
つまりこの問題の答えは,1000g ✕ 0.45J/(g・K) = 450J/K(4.5×102J/K)ですね!

この比熱と熱容量の関係を使うと,前回やった「温度変化に必要な熱量」の公式の比熱ver. が作れます。 まとめノートを参照してください!

今回のまとめノート


時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

【演習】比熱比熱に関する演習問題にチャレンジ!...

次回予告

ここまでで温度変化に必要な熱量の公式の熱容量ver.と比熱ver.が出揃いました。 次回はこの公式を用いて具体的な問題を解いてみましょう。

熱量保存の法則熱平衡に関する典型問題の考え方を解説します!...
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