高校物理の最後を飾る原子分野がいよいよスタートします。 高校で主に学ぶ19世紀以前の物理(ニュートン力学・電磁気学)から,大学で学ぶ20世紀以降発達した物理(量子力学)への橋渡しとなる分野です。
力学・電磁気・波の分野で学んだことをフル活用するので,不安のある人はまずそれらを復習してから臨んでください。
光電効果とは
金属に光を照射すると,その金属から電子が飛び出すことが知られており,これを光電効果といいます。
これだけだと「へー,そんな現象あるんだ。だから何?」という感想しかないと思いますが,実はこの光電効果こそ,19世紀末の物理学者たちを悩ませた大問題なのです!
光電効果に関する事実
ドイツの物理学者レーナルトによって明らかにされた,光電効果に関するいくつかの実験結果を紹介します。
① 光電効果が起こるかどうかは,当てる光の振動数によって決まる。
振動数がある値より小さければ,いくら光を強くしても光電効果は起こらない。 逆に,光が弱くても振動数がある値よりも大きければ,ただちに光電効果が起こる。
(光電効果が起こるか起こらないかの境目となる振動数のことを限界振動数といい,金属の種類によって決まる。)
② 飛び出した光電子の運動エネルギーは当てた光の振動数によって変化し,光の強さを変えても変化しない。
③ 光を強くすると,飛び出す光電子の数が増える。
ふむふむ _φ(・_・
実験結果が説明できない!?
ちょっと歴史的なお話。 物体の運動はニュートンの力学によって解明され,その後長らく謎のまま残ったのは電磁気現象でした。 その電磁気学も19世紀にマクスウェルが完成させ,「これで物理学はすべて完成した!」
…と物理学者たちが楽観視していたときに持ち上がったのが,この光電効果。
さて,さきほど挙げた3つの実験結果,驚くべきことに,これまでの物理学の知識ではまったく説明できない現象だったのです!
当時知られていた知識と光電効果がいかに矛盾しているか,我々も確認しましょう。 すでにマクスウェルによって光の正体が電磁波であることは判明しています。
光電効果は,「金属内の自由電子が光からエネルギーを受け取って外に飛び出す」と解釈するのが自然ですが,波のエネルギーは振動数だけでは決まらず,振幅にも依存します。
よって振動数が小さくても,強い電磁場(=電場・磁場の振幅が大きい)ならば電子に多くのエネルギーを与えられるはずですが,「光電子が出るかどうかは振動数だけで決まる」という実験結果①とは完全に矛盾してますね…(・・;)
また,電子が光からエネルギーを受け取って飛び出すのなら,光の強度が大きいほど光電子の運動エネルギーも大きくなるはずなので,実験結果②と矛盾します。 運動エネルギーは増えないのに,数は増えるという実験結果③もよくわかりませんね…。
この見事な矛盾っぷりに当時の物理学者も頭を抱えたことでしょう。 謎だらけでちょっとモヤモヤした感じですが,今回はここまで。
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
矛盾に満ちた光電効果を完全解明するには,「ある人物」の登場を待たなければいけません。 その人物が打ち立てた,常識はずれの仮説が解決の鍵なのですが,次回はその仮説について見ていきます!