物理基礎の電磁気分野はオームの法則がメインなので,あまり目新しい内容はありませんでした。 電「磁」気なのに磁気の話もありませんでしたね(^_^;)
その分,物理の電磁気分野はボリュームたっぷり。 学校の教科書が手元にある人はパラパラと開いてみてください。 教科書の約半分が電磁気の内容になっているはずです!!
学ぶことは非常に多いですが,がんばっていきましょう(物理基礎の電気分野に不安がある人は先に進む前に復習することをお勧めします)。 はじめに導体と不導体の基本的な性質について見ていきましょう。
導体の性質 〜静電誘導〜
帯電させた物質(正でも負でも構わない)を,帯電していない導体に近づけると,導体は帯電体に引きつけられます。 正の電荷と負の電荷の間に引き合う力がはたらくのは,物理基礎で習ったとおりですが,帯電していない導体が引かれるのはなぜでしょう??
この現象を理解するポイントは「金属の構造」です。 金属は全体として見ると電気をもっていませんが,ミクロの視点から見てみると,金属イオン(正電荷)と,自由電子(負電荷)からできているのでした。
(※ここでは金属を例に導体の説明をしますが,黒鉛など,金属以外の導体も自由電子をもつので,同じ話が成り立ちます。)
これを念頭に置いた上で,帯電体を金属に近づけたときに何が起こるかを考えてみましょう。
正の帯電体を導体に近づけた場合,正電荷と負電荷の間には,お互い引きつけ合う方向に静電気力がはたらくので,金属の中の自由電子は帯電体に向かって力を受けます。 力を受けた自由電子は,実際に帯電体の方へ寄ってきます(自由電子はその名の通り,金属の中を自由に動けるのでした)。
自由電子と金属イオンはもともと全体に偏りなく存在していたのに,正の帯電体を近づけると金属内部にある自由電子は帯電体に近い方に集まって,負の電気を帯びます。一方,帯電体から遠い側は自由電子がなくなるため,正に帯電します。
負の帯電体を導体に近づけた場合は逆に,自由電子が帯電体から遠い側に追いやられるので,帯電体側が正,反対側が負に帯電します。
このように,導体内部で正の電荷と負の電荷が分かれる現象を「静電誘導」と呼びます。 導体が帯電体に引きつけられる現象の正体はこの静電誘導だったのです!
不導体の性質 〜誘電分極〜
ただ,よく考えてみると, セーターでこすって帯電させた下敷きには髪の毛もくっつきます。 髪の毛はもちろん導体ではありません。
あれ!?!? 導体じゃなくてもくっつくじゃん!!
まさにその通りで,帯電体にくっつくのは何も導体に限った話ではないのです。
ですが,不導体には自由電子が存在しないので,静電誘導は起こりません。 ではなぜ不導体は帯電体にくっつくのでしょうか?
不導体には自由電子がないので,正の帯電体を近づけても電子は集まってきません。 しかし,自由電子はなくても「自由でない電子」なら不導体にもちゃんと存在しています。
「自由でない電子」はもちろん原子核の周囲にあるわけですが,この電子が正の帯電体に引きつけられるのです!
(※負の帯電体を近づけた場合は,電子は帯電体から遠い側に行く。)
このように,不導体は物体全体ではなく,ひとつひとつの原子が正と負に偏ります。 不導体に起こるこの現象を「誘電分極」といいます。 誘電分極が生じたら,あとは静電誘導のときと同じ理由(帯電体に近いほうがより強い力を受ける)で,不導体は帯電体に引きつけられることになります。
最後に補足。 「誘電分極が生じる物体」という意味で,不導体は「誘電体」とも呼ばれます。 不導体,絶縁体,誘電体,いろいろな呼び方がありますが,すべて同じ意味なので注意しましょうね!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
物理基礎でも今回の記事でも静電気力というワードが出てきましたが,次回はその大きさなどについて,詳しく見ていきたいと思います!