力がはたらかなければ等速直線運動,一定の力がはたらけば等加速度運動,というように,それぞれの運動には “その運動をする理由” があります。
円運動の場合,それはどんな理由なのでしょうか?
リンゴも落ちるが月も落ちる?
円運動の条件を書くのは簡単ですが,それでは味気ないので歴史的な経緯に触れましょう。
(※ わかりやすさを重視したので,正確な史実だけでなくフィクションも含まれます)
昔々,人類は「自分たちのいる地上」と「神がいる宇宙」を分けて考えていました。
地上と宇宙が別物であるという例のひとつが物体の運動です。
地上で物体を自然に落下させると真っ直ぐ落ちる → 地上の運動は直線運動が基本。
天体は地球の周りをまわっている(ように見える)→ 宇宙の運動は円運動が基本。
という感じで,「やっぱり宇宙は特別なんだ」と思っていたようです。
…やがて時が経ち,アイザック・ニュートンによって,この考えは覆されることになります。
ニュートンといえば,リンゴが落ちるのを見て重力を発見したという伝説が有名ですが,実はそうではありません。
おそらく重力の存在はすでに知っていたはずで,彼が考えていたのは別のこと。 それは,「なぜリンゴは落ちるのに月は落ちてこないのか?」という問い。
考えた末,ニュートンはある真理に到達します!
やはり月も落ちているのだ,と。
ちょっと何言ってるかわからないと思うので,説明しましょう。
(※ 上の図はおおげさに書いています。① → ② → ③の順で起こるというより,①,②,③はほぼ同時に起こると考えてください。)
ニュートンが言いたかったのは,「月の円運動は落下した結果。リンゴも月も重力を受けて落下する。つまり,地上でも宇宙でも物理法則は同じである。」ということなのです。
ニュートン「はい,論破w」
円運動と向心力
ニュートンの考えが正しいとすると,中心に向かってはたらく力が存在すれば,月以外のどんな物体でも円運動をするはずです。
この例を見れば,「中心方向の力があれば,物体は円運動をする」というだけでなく,
「円運動するためには,必ず中心方向へ向かう力が必要」ということもわかります。
円運動において,中心方向へ向かう力のことを向心力といいます。
なお,向心力(中心方向)と速度(円の接線方向)は常に垂直な関係を保っていることに注意してください。
向心力に関するよくある誤解
教科書を見ると,「円運動する物体は向心力を受けている」というような文が書かれていますが,この文のせいで向心力を勘違いする人が続出しているので要注意!
具体的には,
要するに,「円運動している物体には,向心力という新たな力が出現する」というのがよくある誤解で,「物体にもともとはたらいていた力のうち,中心方向を向いているものを向心力と呼ぶ」というのが正解です!
誤解したままだと問題がまったく解けなくなるので,正確に理解してください。
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
次回は円運動を具体的に調べていきます。
直線だろうが円だろうが,運動を調べるといったら,使うのはもちろんアレですよね!