力学

運動量

ここから先はエネルギーに並んで重要な「運動量」という概念について学んでいきます!

運動の勢い ≠ 運動エネルギー

ボーリングを思い浮かべてください。

投げた球の運動の勢いが大きいほど,大きくピンを弾きます。 このとき,球の「運動の勢い」はどのように数値化されるでしょうか?

まず,「勢い」には何が関係しているかを考えましょう。 球の勢いがピンの倒れ方に影響するので,それを想像してみるとわかりやすいと思います。

球の速さが速いほど,ピンは勢いよく倒れる…

軽い球より重い球のほうが,ピンは勢いよく倒れる…

というように,球の勢いには「速さ」と「質量」が関係していることがわかります。「質量」と「速さ」で決まる量といったら……運動エネルギー! てことは勢いは運動エネルギーで表されるの??

結論を急ぐ前に,もうちょっと考えてみましょう。 エネルギーとは「仕事」に直結する量でした。

100Jの運動エネルギーをもっている物体は,100Jの仕事をすることができます。

では,ピンが球からされた仕事は?

あれっ?? ちょっと待って?

「仕事」というのは,物体に力を加えて移動させることを指しますが,いま考えているピンの運動はどうでしょう?

たしかにピンは球から力を受けて運動しますが,これは仕事とはちがいますよね!!

ピンが球から受けた影響が仕事で表せないとなると,その原因である球の勢いも,運動エネルギーとはちがった形で表されることになりそうです。


運動量という概念

ここで登場するのが「運動量」です。

運動量とは,質量と速度の積のことです。

個人的に運動量という単語はあまりよくない訳だなぁって思っています。

「運動の量って何のこと??」って思いませんか?笑

その点,英語はわかりやすいです。

運動量は英語では「momentum」といいますが,momentumは直訳すれば「勢い」という意味です(辞書を引いてみてください)。

そう! この運動量こそが,物体の運動の勢いを表す量なのです!

運動量はベクトル量!!

運動量=質量 × 速度って,運動エネルギーより計算簡単じゃん!って思いませんか?

なのに,なぜ物理基礎ではなく物理で初登場なのか。

答えは簡単。 気づいてますか?

運動量の式,「質量 × 速さ」ではなく,「質量 × 速度」だということに!!

速度はベクトルなので,これに質量をかけた運動量もベクトルなのです。

ベクトルの真骨頂は平面運動。

「物理基礎で扱うのは直線運動,物理で扱うのは平面運動」と以前書きましたが,その分類に従うと,運動量は物理基礎ではなく物理の範囲に収まるのです。

とりあえず今回は運動量という概念の紹介だけで終わりにします!

運動量は「勢い」を表すベクトル量であるということだけ,まずは覚えておいてください。

今回のまとめノート


時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

【演習】運動量運動量に関する演習問題にチャレンジ!...

次回予告

運動量を求めることは自体は簡単だけど,運動エネルギーと運動量がごっちゃになってしまう人の多いこと多いこと…

次回はその区別を明確にしていきましょう!

運動量と力積運動エネルギーと運動量はともに質量と速度で決まりますが,それぞれ役割がちがいます。物体はエネルギーを使って仕事ができますが,運動量では何ができるのでしょう?...
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