原子の内部構造

陰極線に関する一連の実験が陰極の金属を別の金属に取り替えても同じ結果になることから,陰極線の正体である電子はすべての金属に共通に含まれていることがわかります。

その後,放射性元素から出る放射線の一種もその正体は電子であったことが判明。

これらの結果を受けて,「どうやら電子は金属だけでなくすべての物質,それも原子の中に含まれているとようだ」という説が20世紀初頭に唱えられました。
この説は「この世界で最も小さい物質は原子である」という,それまでの常識を覆すものです。

今回はそんな時代に起こった,原子を巡るちょっとしたゴタゴタの話。

目次

原子をさらに分けると

〈天の声〉
〜みなさんはすでに原子の内部構造について学んでいますが,それらはいったん忘れ,当時の物理学者たちの気分になって読んでください〜

科学研究ではそれまでの常識よりも実験結果がすべてなので,「原子の中には電子というもっと小さい粒子が入っている」という事実をまず認めることにしましょう。

原子そのものは電気をもたないことと,電子は負の電気量をもっていることを考えると,

原子(電荷なし) = 電子(負電荷)+ 電子以外の部分(正電荷)

という構造になっていることはすぐにわかります。
また,電子の質量は原子に比べて極めて小さいので,質量の大半は “電子以外の部分” がもっていることも明らかです。

こうなると “電子以外の部分” が何者なのかが気になってきますが,いつまでもその呼び名はかわいそうなので,とりあえず “原子核” とでも名付けておきましょう。

さて,当時の物理学者たちの興味は原子核の正体よりも,「原子核と電子がどのようにして原子を構成しているのか?」でした。

J.J.トムソンの「ブドウパン型原子モデル」

電子発見の立役者でもあるJ.J.トムソンは,
・原子の質量のほとんどが原子核なのだから,原子核がデカくて,電子は小さいはず。
・原子核は正電荷をもち,電子は負電荷をもつので,両者は静電気力でくっついているはず。

という2つの仮説をもとに,「原子はこうなっているんじゃないか?」という予測(原子モデルという)を立てました。

ふーん,なるほど。 特に否定する部分もないような?

実際に原子の中がどうなっているかは何らかの実験で明らかにされるまでわかりませんが,このブドウパン型原子モデルは「原子はこうなっているにちがいない! さすがトムソン先生!」みたいな感じで(知らんけど笑),有力視されていたそうです。

長岡半太郎の「土星型原子モデル」

そのトムソンのモデルに待ったをかけたのが長岡半太郎(物理の教科書に初めて登場する日本人!)という人。

まずは長岡の提唱した原子モデルをご覧ください。

この原子モデルのもととなった発想を簡潔に書いておきますね!

おぉ,これまた説得力があるような…

しかし,真実はひとつ。
トムソンか,長岡か,はたまたどちらもちがうのか。 果たして真相は!?

ラザフォードの実験

どちらが正しいかは,提唱者が有名人だとか,説得力があるとか,そんなことでは決まりません。
科学論争に白黒つけるのは実験結果。

原子の構造を確かめる実験は,トムソンの弟子であるラザフォードらによって行われました。

結果はどうなったか,言うまでもありませんよね?

そう,トムソンのモデルは間違いであることがこの実験で明らかとなったのです。

ラザフォードの原子モデル

「うんうん,そりゃ土星型が正しいに決まってるよね。だって教科書に書いてある原子の図はこれだもん。」

と思った方,実は厳密にはちょっとちがいます。
ラザフォードの実験によってトムソンのモデルは否定されましたが,長岡のモデルもちょっとちがくね? って結論になったのです。

どこがちがうかというと,原子核が長岡が思っていたよりずっと小さいということ。
この点を改良したモデルをラザフォードの原子模型といい,理科の教科書に載っているのはこれです。

今回は歴史的な話ばかりだったのでまとめノートはありません。
演習問題は用意しているので,時間に余裕がある人はチャレンジしてみてください!

次回予告

原子の構造についてこれで一件落着したかと思いきや,まだ欠陥がある!?

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