原子核は,不安定な状態から安定な状態に移り変わるときに放射線を放出しますが,放射線を出す前後で原子核は具体的にどう変化するのでしょうか?
α崩壊
原子核がα線を放出することを,α崩壊といいます。 これは陽子と中性子が多すぎる原子核が,陽子2個と中性子2個を1セットにして(=ヘリウムの原子核!)放出してしまう現象です。
ここで特に注意してほしいのが陽子の数。 α線としてヘリウム原子核を放出するということは,単純に考えて陽子2個が失われる計算です。
さらに「陽子の数=原子番号」という事実も合わせて思い出してください。
…と,いうことは何と,原子核はα崩壊によって,原子番号が2だけ少ない別の原子核になってしまうのです!!
中学校の授業で習った通り,化学変化によって原子の種類を変化させることはできません。 銀から金をつくり出すような「錬金術」は不可能です。
ところが,放射性崩壊では原子核の種類が変化してしまうことが普通に起こります!
んー,なんだか狐につままれたような気分…
β崩壊
原子核がβ線を放出することを,β崩壊といいます。 β線の正体は電子なわけですが,原子核のまわりにある電子が飛び出すのではなく,原子核の中から電子が飛び出します!
でもちょっと待って下さい。 原子核の中は陽子と中性子だけで,電子なんかどこにもありませんよね? いったいどこから電子が出てきたのでしょうか??
次の反応式がその答えです。
これでβ線の出どころはわかりましたが,この反応で生じた陽子は飛び出さずに原子核にとどまります。
γ崩壊
α崩壊やβ崩壊をした直後の原子核はエネルギーが高い状態になっていることが多く,その場合は余分なエネルギーを電磁波(γ線)として放出します。 この現象がγ崩壊です。
γ崩壊は電磁波を放出するだけなので,α崩壊やβ崩壊のような原子番号や質量数の変化は起こりません。
半減期
前回の記事で放射能という用語の説明をしましたが,放射能をもつことと,実際に放射線を出すことはイコールではありません。
放射能をもつ物体は放射線を出すかもしれないし,出さないかもしれない。 実は,原子核の崩壊が起こるかどうかは確率的な問題なのです!
つまり,すぐにでも崩壊するかもしれないし,何年も崩壊しないまま残っているかもしれない…
そうすると,原子核がどれぐらいの頻度で崩壊するのかが気になるところですが,その指標としてよく用いられるのが「半減期」です。
原子核が崩壊する確率は原子核の種類ごとに決まっているので,半減期も原子核の種類ごとに異なります。
半減期は遺跡などの年代特定などに利用されています。
炭素の放射性同位体の半減期は約5700年なので,遺跡に使われている木材に含まれる炭素に着目し,放射性同位体の割合が基準の半分になっていれば,その木は約5700年前に伐採されたものである,と特定できるわけです。
例題
例題を通して,放射性崩壊と半減期に関する理解を深めましょう!
解答はこの下にあります。 まずは自力で解いてみてからスクロールして答え合わせしてください。
では,解答です。
それから(3)ですが,問題文では原子核の個数の代わりに質量が与えられています。
「あれ? これじゃ公式に代入できないじゃん!」って思った人は,下の解説をしっかり読んで理解してください。 この手の半減期の問題は割と多いですよ!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
核反応式を学び,原子核に関する知識をさらに深めていきます!