電池の起電力と内部抵抗

電気回路で不可欠ともいえる部品,それは電池。
今回はその電池について,ちょっぴり深入りしたいと思います。

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電圧と電位差と起電力

これまで習った範囲でも,“似て非なる用語” はいくつか登場してきました。
「速さと速度」とか,「質量と重さ」とかが最たる例。

電気の分野においてもそのような要注意単語は存在します。
それは,“電圧” と “電位差” と “起電力” です!

これら3つの用語ですが,まず,電圧と電位差は同じ意味。
これは物理基礎のところでも解説しましたね!

同じ意味なのでどっちを使っても構わないですが,電気回路の話をしているときは電圧,それ以外の話(電場など)をしているときは電位差,みたいな感じでフワッと使い分けてる印象。 めんどくさいから用語くらい統一しろ

とまぁ,復習はこれぐらいにして,今回のタイトルにもなっている「起電力」。
起電力の単位はV(ボルト)なので,電圧の一種です
(※ 起「電力」という名前だが,電力とは無関係なので注意! 用語なんとかしろ)。

しかし,電圧とまったく同じ意味というわけではありません。
これを説明するために,“すべり台” に再登場してもらいましょう。
電圧とは,電気の世界での “高さ(正確には位置エネルギー)” のことなので,電気回路をすべり台に例えて解説していましたね!

さて,「電池の電圧」と言った場合,普通はすべり台の高さVのことを指します。
そして「電池の起電力」もまた,すべり台の高さVのことを指します。
じゃあ同じじゃないかよって? まあ慌てない慌てない。

この2つの用語の差は何かというと…

(※ これは速度と初速度の使い分けに似ている。時刻0のときの速度のことを特別に「初速度」と呼ぶのと同じで,電流が0のときの電圧のことを特別に「起電力」と呼んでいる。)

わざわざ名前を別にして区別していることからわかるように,電流があるかないかですべり台の階段の “高さ” は変化してしまいます!

もう少し具体的にいうと,電流が流れると,本来の “高さ” (=起電力)から,どんどん下がっていってしまうのです。

しかし,これはイメージしづらいですよね?
なんたって,現実のすべり台の高さは子どもが遊んでいてもいなくても変化しないから。
イメージしづらかったらどうするか。 そう,計算ですね!

電池の内部抵抗

電池は化学反応によって起電力をつくり出す部品ですが,その役割だけではさっきの「電流の有無によって電池両端の電圧が変化してしまう現象」がうまく説明できません。

「電池の中には起電力をつくり出す部分の他に,抵抗もある」と考えると,いい具合に解決できます!

なぜこう考えるとうまくいくのか,理由もちゃんと理解しておいてください。

ほら! 電流が流れると電池両端の電圧が起電力より小さくなることがちゃんと式で示せました!

内部抵抗が無視できるならば,それによる電圧降下も無視できるので,その場合は完全に「電圧=起電力」となります。 
これまで我々が解いてきた問題は全部このパターン!!
内部抵抗が無視できないときだけ,電池を「起電力を与える部分」と「内部抵抗」に分けて考えるようにすればOKです。

今回のまとめノート


時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。

あ,そうそう。 勘違いするといけないので1つだけ補足しておきますが,今回扱った「電流が流れると電池の電圧が小さくなる現象」は,いわゆる「電池が切れる」現象とはまったく関係ありません。

あくまでも,「電流が流れている間だけ,電池の電圧が起電力以下になる(つまりスイッチを切れば元の起電力に戻る)」という話であって,「電流を流す度に,電池の電圧が減ってやがて使えなくなる」という話ではありません。
間違えないように!

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