いよいよ力学の真骨頂,「運動の3法則」に突入します!!
運動の3法則
運動の3法則とは,
第1法則:慣性の法則
第2法則:運動の法則
第3法則:作用反作用の法則
のことで,物体の運動を調べる上では必須となる法則です!!
これらは17世紀末にニュートンによってまとめられたもので,これらを適用すれば,身の周りの物体の運動はすべて分かる!といっても過言ではないくらい,非常に重要な法則です。
今回から何回かに分けて,この重要な法則をひとつずつ見ていきたいと思います。 ではさっそく,第1法則から見ていきましょう!!
運動の第1法則
運動の第1法則は,別名「慣性の法則」とも呼ばれます。 中学校でも習ったし,こっちの名前のほうがよく知られていますね!
「慣性」は日常生活ではまず使用しない単語ですが,「そのままの状態でいる」というような意味です。
慣性の法則の内容を簡潔に述べると,「物体に力がはたらかなければ,物体の運動状態は変化しない。」という内容です。
こういう法則が出てくると,「法則を覚えなきゃ!」と言って丸暗記しようとする人がいるんですが,暗記は無意味ですよ! 何を主張している法則なのか,自分の言葉で説明できなければいけません。
そのためには内容(法則が成り立つ条件や結論)をしっかり理解すること,その法則が適用される具体例を挙げられることが大事です。 それらを踏まえて,慣性の法則の中身をよーく見てみましょう。
慣性の法則を読み解く
まず前半の「物体に力がはたらかなければ」の部分ですが,これは正確には合力が0という意味です。 例えば物体を左右からそれぞれ5Nの力で引っ張ることを考えましょう。 この場合,力がお互い打ち消しあうので最初から力がはたらいていないのと同じ。 こういう場合も慣性の法則は成り立ちます。
物体に何の力もはたらいていないという状況はほとんどありえないので,慣性の法則は,「物体にはたらく力がつりあっているときに成り立つ」と解釈していいでしょう(力がつりあっていることと,合力が0であることは同じ意味!)。
次に後半の,「物体の運動状態は変化しない」の部分です。 “運動状態”とは具体的に何を指すのでしょうか?
教科書を読むときは,こういう何気ない言葉にも気をつけて欲しいのですが,ここでいう運動状態とは,物体が止まっているのか,それとも動いているのか,ということです。
つまり,運動状態が変わらないというのは,「止まっている物体は止まったままで,動いている物体は動いたまま」という意味。
ところで,「力がはたらかなければ,止まっている物体は止まったまま」というのは,いまさら言われなくても当たり前。 よって慣性の法則で注意しなけれないけないのは,「力がはたらかなければ,動いている物体は動いたまま」の方です!
これこそ人類が長い間勘違いしていたもので,「力がはたらかなければ,物体はやがて止まる」と昔の人々は思い込んでいました。 いや,昔の人だけではありません! いまこれを読んでる皆さんの中にもそう思っている人,いませんか?
たしかに,床の上で物体を滑らせると,そのうち止まります。 ボールを転がすと,物体を滑らせるよりは遠くまで行きますが,それでもやがて止まってしまいます。 こういった現象を小さい頃から無意識のうちに見続けているので,「物体は力を加えなければやがて止まる」と考えてしまいがち。
ですが,みなさんはもう知っているはずです。 床の上で物体やボールが止まるのは摩擦力や空気抵抗のせいだということを。
もし摩擦力や空気抵抗がなければ,動いている物体は止まることなく動き続ける,というのが慣性の法則の主張なのです。
等速直線運動,ふたたび
「動いている物体は動いたまま」をもう少し正確に説明しましょう。 物体の運動状態が変わらないということは,運動している物体の,速さや向きも変わらないということです。
あれ? これってどこかで聞いたことのあるセリフのような…?
そうです!等速直線運動のことですよね!
ここで等速直線運動というワードが再び登場。
このワードを使って,慣性の法則を正確に表現すると,「物体に力がはたらかない,またははたらいていてもつりあっているとき,静止している物体は静止し続け,運動している物体は等速直線運動をする。」となります。
この法則は逆も成り立つことに注意してください。すなわち,「物体が静止している,または等速直線運動をしているとき,その物体には力がはたらいていないか,または力がつりあっている。」という表現も正しいということです。
慣性の法則の具体例
せっかくなので,慣性の法則の具体例も挙げてみましょう。
「止まっている物体が止まったまま」の例はだるま落としやテーブルクロス引きが有名です。 下にある物体が突然なくなっても,上にある物体は静止しようとするので,下の物体と一緒に動き出すことはありません。
「動いている物体が動いたまま」の例は,これまた有名ですが,電車が突然止まると,乗客が進行方向にバランスを崩す,というのがやはり一番わかりやすいように思います。
これ以外の他の例もぜひ考えてみてください!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,問題演習にもチャレンジしましょう! より一層理解が深まります。
次回予告
第2法則をとばして,次回は第3法則を見ていくことにします。