今回は位置エネルギーについてです。「高いところにある物体は位置エネルギーをもつ」ということは中学校で学習しています。
そこで今回は位置エネルギーの計算を中心に見ていきたいと思います。
重力による位置エネルギーの式
物体の位置が高ければ高いほど,その物体のもつ位置エネルギーは大きくなります。
では,10kgの物体が地面から5mの高さにあるときと10mの高さにあるときでは,位置エネルギーはどれぐらいちがうでしょうか?
式を紹介しつつ,実際に求めてみます。
このように,高さが2倍になると位置エネルギーも2倍になり,位置エネルギーと高さは単純な比例関係にあることが分かります。
ところでこのmghという式,どこかで見覚えありませんか?? 覚えていない人はこちらの記事をどうぞ。
mghとは重力がする仕事でした。 落下をはじめてから地面に着くまで,重力は物体にmgh[J]の仕事をします。
重力からされたこの仕事をまた別の仕事(上の例ではくぎを地面に打ちこむ仕事)に変換しているので,位置エネルギーの正体とは重力のする仕事である,と言えます!
偶然同じ式になっているわけではありません。
位置エネルギーの基準
私が通った高校は4階に物理実験室がありました。 この4階にある物理実験室で位置エネルギーの測定を行うとしましょう。
まず位置エネルギーmghを計算することになります。 mははかりを用いればすぐに求められます。 gは重力加速度なので9.8を代入します。
最後に高さhですが,……高さはどこから測りますか?
「物体が高いところにある」と言ったとき,みなさんは無意識のうちに地面からの高さを想像していると思います。 もちろんそれはそれで間違っていないのですが,今回の場合,地面からの高さを測るとすると大変です!
なぜなら,実験室は4階だから!!
しかしよく考えてみると,実験室で物体を落としても地面まで落下することはありません。 床に落ちて終わりです。 床から下には落っこちないということは,物体が床にあるときを位置エネルギー0とすればいい!ということになります。
つまり地面ではなく,4階の床を位置エネルギーの基準とするわけです。 床からの高さを測って,それをhに代入すれば位置エネルギーが求められます!
このように位置エネルギーを計算するとき,高さを測るときの基準は,状況に応じて自由に決めて構いません!
一番計算しやすいと思われるところを基準に選んで計算してください。
基準からの高さはどこを基準にするかによって変わるので,同じ物体の位置エネルギーを求めても,AさんとBさんで計算結果が異なることもありえます。
同じ物体について計算しているのにちがう値になって大丈夫なの?と心配になるかもしれませんが,「位置エネルギーそのもの」はちがっていても,「位置エネルギーを用いて計算した結果(たとえば落下したときの速さなど)」は変わらないので,その点はご安心を。
基準より下に物体がある!?
基準を自由に決めていいというのはとても便利ですが,同時にある弊害を生み出します。 それは,「物体が基準より下にある可能性」です。
地面を基準にしていればそんな可能性はありえません(物体が地面にめり込むなら別だけど笑)が,先ほどのように4階の床を基準にした場合,3階にある物体はどうなるのでしょう?
(※4階にある物体は4階の床を,3階にある物体は3階の床を基準にすればいい,というのはダメ! 1つの問題につき基準は1つ!)
この問題は「基準より低い=負の高さ」と考えることでうまく解決します。
このように,基準よりも低いところにある物体は負の位置エネルギーをもつと解釈してください!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
次回は,重力以外の位置エネルギーを紹介します! お楽しみに!