物理基礎力学編,最終回も力学的エネルギーについてのお話です。 前回は力学的エネルギー保存則を学びました。
力学的エネルギーはいつも保存するわけではなく,保存力が仕事をするときだけ保存する,というのがポイントでした。 これは裏を返せば,非保存力が仕事をする場合には,力学的エネルギーは保存しないということです。
力学的エネルギーの話になるとどうしても「保存する場合」が主役になりがちですが,「保存しない場合」についても勉強しましょう。
力学的エネルギー “変化” の式
力学的エネルギーが保存する場合は,2つの地点での力学的エネルギーを求め,それらをイコールで結んで計算しました。 しかし保存しない場合はイコールで結べません。
つまり計算できない!!
…と諦めるのはまだ早いです。 保存しないということは,力学的エネルギーが増えたり減ったりするということですよね?
いくら増えるのか(または減るのか)が分かれば計算できると思いませんか?
非保存力が仕事をする場合,「力学的エネルギー “保存” の式」の代わりに,「力学的エネルギー “変化” の式」が立てられそうです!
エネルギーを変化させられるのは仕事だけ
ここまで何度も繰り返してきたことですが,エネルギーと仕事には密接な関係があります。
仕事をすればその分エネルギーは減るし,仕事をされればその分エネルギーは増えます(された仕事をエネルギーという形で蓄えている)。
これは力学的エネルギーの場合も当然成り立ちます。 今回,力学的エネルギーが保存しない原因が何なのかというと,それはもちろん非保存力です。
つまり力学的エネルギーは,非保存力のした仕事の分だけ変化することになります!!
それでもエネルギーは全体として保存する
上の例1では,動摩擦力がした仕事の分だけ力学的エネルギーが減るというのがポイントですが,減ったエネルギーは消えてしまったのでしょうか?
実は摩擦力のした仕事はすべて熱エネルギー(摩擦熱)に変化することが知られています。 このことを踏まえた上で,上の例1の式を見直すとこのようになります。
摩擦があるので力学的エネルギーは保存しませんが,摩擦がした仕事を熱エネルギーと読み替えれば,熱まで含めた全体のエネルギーは保存しています!!
エネルギーというのは様々な形があります。 力学的エネルギー,熱エネルギー,電気エネルギー,光エネルギー,化学エネルギー,核エネルギー,…
今回の力学的エネルギーのように,単独で見ると保存していないように見える場合でも,減った分は他のエネルギーの形に変化していて,エネルギー全体で見るとちゃんと保存しています。
「力学的エネルギー」は保存しないこともあるけれど,「(広い意味の)エネルギー」は必ず保存します。このちがいはしっかり理解してください!
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
これで物理基礎の力学の分野は終了です。
このあとは基礎じゃない方の「物理」に突入します。 物理基礎で学んだ内容をフル活用していくので,物理基礎の内容を一通り(補講も含めて)復習してから進んでください。