この先は波の進み方について理解を深めていきましょう!
波には特徴的な性質がいくつもありますが,今回のテーマは「回折」です。
波は障害物に遮られない!?
自分の部屋にいるときに,台所から「ご飯できたよー」
誰でも経験したことのある家庭の一幕。 相手の声は,部屋のドアが閉まっていても聞こえてきます。 音は壁を通り抜けてくるのでしょうか?
現象だけ見ると,たしかに通り抜けたようにも見えるのですが,実際に起こっているのは「回折」という現象です!
回折というのは,波が障害物の横や隙間を通って,その裏側にまわり込もうとする現象のことです。
ふつうの物体はこんな性質をもっていないので,回折は波の特別な性質のひとつといえます。
部屋のドアが閉まっていても声が中まで聞こえてくるのは,壁を通り抜けたのではなく,ドアのわずかな隙間から波が侵入し,回折したからに他なりません!
回折の起こりやすさ
上では音を例に出しましたが,水面の波や光など,回折はどんな波でも起こる現象です。 ただし,状況によって回折の起こりやすさは異なります。
具体的には,通り抜ける隙間の幅に比べて波長が同程度か,それより長いとき回折が顕著になります。
携帯電話の電波は「周波数(振動数)が低いほどよくつながる」といいますが,この理由も回折によるものです。 電波を波の基本式 v=fλに当てはめると,空気中を伝わる電波の速さvが一定であることから,波長と周波数は反比例の関係にあることがわかります。
つまり,電波は周波数が低いほど波長は長くなり,結果として回折が起こりやすくなるのです!!
電波の回折が起こりやすくなるということは,屋内にいる人にも電波が届きやすくなり,その結果,「電波がよくつながる」と感じられるわけです。
いまはあまり聞かなくなりましたが,以前携帯電話は,D社やA社に比べてS社がつながりにくいと言われていました。 これは基地局の数の問題だと思っている人がいるようですが,ちがいます。
実は,携帯電話事業にあとから参入したS社だけ周波数の大きい電波を使っていたのが原因なのです(現在は低い周波数の使用が認められている)。
回折という現象ひとつとっても,けっこう奥が深いと思いませんか?
今回のまとめノート
時間に余裕がある人は,ぜひ問題演習にもチャレンジしてみてください! より一層理解が深まります。
次回予告
次回は回折よりも馴染み深いと思われる,波の反射・屈折について見ていきます。